人生に起こる事に何一つ無駄は無いと言うが、まりもが病気になった事に、一体どんな意味があるのだろう・・・まりもが悪性リンパ腫と診断された頃からずっと考えていた。
人生に『もしも』は無いけれど、もしまりもが病気にならず今も元気にしていたなら、松剣が母親に対し、何かと我慢したまま接する関係は、ズルズルと今も続いていただろう。
まりもが旅立つ3日前の事だった。東京の妹の家に遊びに行っていた母から電話が掛かって来た。孫とのひと時は、それはそれは楽しかったらしく、嬉しそうに東京での出来事を話した。
初孫だし1歳半の可愛い盛り。母が孫を思う気持ちは想像も理解も出来るので否定はしない。しかしまりもが闘病中である事は母も知っているはずなのに無神経だと思った。
電話があったのは、まりもがこんな状態だった時。熱でしんどそう・・・
闘病中も何かと母は自分の思いを優先させた。まりもの調子次第と言う約束を嫌い、妹一家との食事や親戚の集まりに強引に松剣を呼んだ。まりもの治療が難しくなり、冴えない顔をしていると機嫌を損ねる事もあったが、ずっと我慢していたという経緯もある。
それでも東京からの弾んだ母の声に耳を傾けていたら、あんたも来れば良かったのに、と言った。そんな、まりもがこんななのに行けるわけ無いじゃん・・・ムッとしてそう返した。すると母は、それでもこの子が可愛いのは今の内よ、と楽しそうに言ったのだ。
・・・松剣の中で何かが切れる音がした。こんな状態のまりもを放っておいて行けるわけなかろう!電話口で叫ぶと母は少しの沈黙の後静かに、わかった、とだけ言った。
受話器を叩きつける様に電話を切り、わかったじゃなくてゴメンだろ!まりもが大変な時に無神経な事言って悪かったって謝れよ!直接言えなかった自分が情けないと思った。
幼い頃から松剣にとって母親は絶対的な存在だった。父も母には何も言えず、貝になる事を選択した。しかし妹だけは違った。泣いてでも自分の考えを訴えるので、母との関係は良好だ。
母は、自分が容易に出来ると思う事を松剣が出来ないと腹を立てたし、弱音を吐く事も許さなかった。勉強もからっきし、運動神経も鈍いし要領も悪く不器用な松剣。いつも叱られてばかりだったし、出来ない事は何時間でも練習させられた。蝶々結び、書けなかった数字の8、コロ無し自転車・・・勉強も良く出来、器用で要領の良い妹の3倍は叱られたに違いない。
そんな幼少期からの溜まりに溜まった母への怒り。まりもの事が最後の一滴となり溢れ出した。あれ以来、母とはまともに口をきいていない。盆休みに二人の関係を心配した妹が取りなそうとしてくれたが、余計にこじれてしまったままだ。
先月のある日曜の朝、母が普通に電話をかけて来た。おはよう、今からお父さんと栗拾いに行くけど栗要る?・・・まりもの事、まだ終わって無いよね!?栗で誤魔化そうったってそうはいかん!それさえ言えず、ささやかな抵抗として、要らんわ!と電話を切るのが精一杯だった。
しかしこのままで良いはずは無い。母も何があってもおかしくない歳だ。何とかしなければと思うのではあるが・・・早く仲直りしてね!
今回の事は、母との関係をじっくりと考えさせてくれた様に思う。幼い頃の自分の思いや気持ちを振り返り、大切な何かをして来なかった『つけ』がこの歳になって回って来た事を教えてくれたのかもしれない。
それにしても、もっと違う教え方は無かったのでしょうか、神様。余りにも代償は大き過ぎやしないでしょうか・・・
6 件のコメント:
こんにちは
年配の方々にとって、ペットは「たかが。。。」というくらいの存在なのですね。家族同様の存在、とは決して思ってもらえないものです。
恥ずかしながら私の父はわんこが病気とわかって病院にかかっていると知るや「そんな犬にお金をかけるなんて。捨ててきたら」とのたまいました。
まあそういう年代とわかっていたので、特に目くじらをたてることはしませんでしたが、2代目のわんこがリンパ腫にかかり、再び闘病生活に入った時、そのことを一切話しませんでした。亡くなって2年になりますが、まだ話していません。
地方に住んでいて、なかなか我が家にまで足を運べなかった(高齢で)こともありましたし、私が帰省した時も犬のことは決して言いませんでした。言うことでこちらが傷つくことがわかっているからです。
親子とはいっても、もう30年も離れて暮らしているせいか、なぜかそれほど情も湧いてこない。冷たいでしょうか?
子供の頃の思いも松剣さんと重なる部分が大きいです。
松剣さんのお気持ちは痛いほどわかりますが、ここはひとつ大人になって、歩み寄られてはいかがでしょうか?お母様と普通に話してあげられればそれでいいのですから。
お母様はかわいい息子が(たかが)犬にかかりきりになって、母親を大事にしてくれない、と思っておられるのでしょう。(自分にも言い聞かせてますが)悲しいですがそういう年代だと思ってあげましょう。
話は変わりますが、平井堅さんの「瞳をとじて」という歌をご存知でしょうか?2年前愛犬を亡くした私の気持ちにぴったり寄り添ってくれ、聴くたびに涙し、立ち直るきっかけにもなった曲です。
松剣さん、相方さんが悲しみを乗り越えて新しく踏み出していかれますように、陰ながら応援しています。
長々と失礼いたしました。
メグさん
コメントありがといございます。気持ちをわかってくださる方が居られ嬉しくなりました。
母は古希を過ぎていますが、やっぱりこの年代の人は『犬は犬、人は人』と言う考えの様です。
メグさんも辛い思いをされたのですね・・・価値観は人それぞれ。違って当然ですが、自分の価値観を人に押し付けない様、逆に気を付けないといけないですね。
ボロボロの財布を持っている人に、いい加減新しいの買えば?ボロボロじゃん、と思っても
口に出すもんじゃ無い。もしかすると、大事な人からプレゼントされたとか、形見だとか、その人にとって思い入れの強い大切な物かもしれないのです。
今回の事も、価値観の違いと諦めてはいるのですが、どうしても一言謝って欲しいのです。でなければ、頑張ったまりもに示しが付かないし、どうしてもあの一言は許す訳にはいかないのです。相方曰く、融通が効かず頑固な性格は、親子でそっくりなんだそう。仲直りまでもう暫く時間が必要なのかもしれないです。
松剣さん、お母様の言葉は許せない一言だったのですね。
まりもちゃんはこんなに愛されて幸せでした。
我が家では夫が高額な治療に難色を示し、子供にもお金がかかる時期でしたので、後悔のない治療をしてやれたかというと、考えてしまいます。
ただ最後の最期に苦しい息の下、動けないはずの愛犬がベッドから降りて私の部屋まで歩いて挨拶にきてくれたこと、忘れられません。
犬って本当に愛しい存在ですね。
松剣さんの心に刺さった棘がいつの日か抜けますように。
まりもが教えてくれたこと…
そうね、松剣の気持ち痛い程わかるしなんでそんな考え方ができるんだ(怒)と感じることもしょっちゅう…でも右から左に流すようにしてやり過ごす、相手が親だけに…なかなか感情のコントロールが難しいとこではある
まりもは大切な事を教えてくれたんだよね、松剣や相方、もちろんあんずにとってまりもは大事な大事な可愛い家族だからこそ自分達だけでそれをわかっていればいい、まりももそれで十分だよって言ってる、だってまりもはそういう健気でお利口さんだったもん、まりもには松剣と相方とあんずが側にいてくれたら何より幸せだったんだから…
お母さんにとっての初孫は言葉では言いあらわせない程の愛おしさがあってそれを松剣にも共感してほしい、見せてあげたい、そう思ったんだろうね
でもタイミングが悪かった
うちの親にも言えるが口は災いのもとって言葉やセリフを再々吐きすてる、本気で悩むことや兄妹で母親の暴言を議論することもしょっちゅう…確かたった数日前も兄から連絡がありおふくろの口の悪さでキレそうになる、どうにかならんもんかーと、息子にそんな思いをさそうなんてみじんも思っていないのに何故かそうなってしまう…
なんだか話が長くなってしまったけれど、松剣の気持ちはほんとによくわかるけれどずっとこのままではいられないこともわかってるだけに、どうしたら良いものか…苦悩してるんよね
でも大丈夫、必ずまりもが何かキッカケをつくってくれるから!
メグさん
我々がまりもの事をどれだけ可愛がっていたのか一番身近に居て良くわかっていたはずの母に『心無い事を言われた』事がとても悔しかったのです。
もう少し寄り添ってくれても良かったんじゃ無いか、と・・・
リンパ腫の治療には我が家も結構な金額を使いましたが子供が居ないから出来たに過ぎません。
掛けた治療費と愛情の大きさは比例する訳では無いので、その時その時で出来る十分な事をされたのなら、それでワンちゃんも幸せだったと思います。
ワン子って可愛いですね。
本当に最期まで飼い主を喜ばせようとして褒められるのが嬉しくて仕方がないんでしょうね。
健気で純粋で・・・
お互いに又良いご縁がありますように。
ところで、平井堅さんの「瞳をとじて」はただの恋愛の歌ではなかった事、始めて知りました。
何よりも大切だった恋人を白血病で失いながら何年経っても思いを断ち切れずにいる歌だったんですね。
特に2コーラス目の『いつかは君のこと なにも感じなくなるのかな、今の痛み抱いて 眠る方がまだ いいかな』と言う所は泣けてしまいます。
演歌ばかりの私にはとても新鮮でした。
良い曲を教えて下さってありがとうございます。
○美さん
確かに親は傷つけてやろうとか困らせてやろうなどと思って言っている訳じゃ無いと思うけど、結果そうなってしまったのなら素直に謝れば良いのになって思うのです。
でもどこの家でもよく有りがちな話なんだなぁと、○美さんやメグさんのコメントを読んで悪いけど思わず笑ってしまいました。
という事は、真剣に悩んでいるこの状況も『そうそう、あるある!ウチもまさにそう!』って感じで笑われてるって事か!?
○美さんの言う通り、松剣と相方そしてあんずがまりもの事を大事に思っていればそれで十分なのかもしれないね。
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