風邪で寝込む事もないほど健康だった父が、体調が良くないと自ら医者へ行ったのは盆を過ぎた頃だった。
排尿ができず、お腹が苦しいと受診した泌尿器科で、その原因が精巣の腫れと前立腺肥大によるものとわかり、詳しい検査の結果どうやら精巣癌らしい事が判明した。
9月18日に左の精巣摘出手術を受けると同時に前立腺の組織も採って検査したところ、前立腺は癌ではないこと、摘出した精巣もそこまで質の悪い物では無さそうな事がわかり、ホッとしたのも束の間、転移が無いか受けたCT検査で胃癌が発覚したのだった。
初期ではなく進行した癌だが、手の施しようがないというレベルではなく、手術で胃の3分の2くらい切れば、何とかなりそうと医者は言うが、その為には先ず禁煙が絶対らしいのだ。
煙草を吸っていると、手術後に合併症になるリスクが非常に高く、とりわけ肺炎は大敵なんだそう。傷の治りも遅く、癌の進行も早くなり、何も良いことはないと、先生はキッパリ仰った。
今回は内科と外科を受診したが、どちらの先生も、喫煙者に精巣摘出手術をした泌尿器科は何を考えているのか信じられないし、胃に癌があることを知りながら、退院後も禁煙を強く命じなかった事に呆れておられた。
本来なら禁煙出来ている状態を想定し、11月には手術が出来るはずだったのに、禁煙をしていなかったことで手術は12月初め頃の予定となってしまった。
しかし父も母も、頑張って禁煙して胃を3分の2取って2〜3年寿命が延びた所でどうなんだろう?それより好きな煙草を吸って来年死んでも、それはそれで本望だと言う。
趣味もなく、学生時代に仲の良かった友達も特に居らず、何が楽しみで生きているのだろうといつも不思議に思っているという母。
なので両親の言うことも一理あるが、松剣としては完治の可能性があるなら頑張ってもらいたいのが正直なところ。
すると父は、今日から禁煙しますと言った。まだ生きようという気はあるらしい。
中学受験に向けて頑張っている、父にとってたったひとりの孫娘が、じいじが大変と知り大泣きしたと妹から聞いた。
来年の2月には受験が終わるから、良い知らせを持って春休みに帰省できるように頑張ると誓ってくれた姪っ子。
そして、癌になった本人や家族をサポートして下さる看護師さんも専任で就いて下さる事になっている。
緩和ケアって、末期癌の患者さんが人生の最期を出来るだけ穏やかに過ごす為の医療と思っていたが、今は癌と診断された時から始まり、患者本人だけではなく、家族の不安や恐怖を和らげるように相談に乗ってもらうなど、精神的なフォローなども引っくるめてのことをいうのだそう。
看護師さんから家族構成や好きな食べ物など色々と質問されたが、ほぼ全てにおいて特に無しと答えた父。
多分そうだろうなと思いつつも、やっぱり何かに希望を持って病気に立ち向かって欲しいと思う松剣。
幸い広島は、地方都市の中でも結構緩和ケアが充実している地域で、在宅医療などの相談にも積極的に応じてくれると言うので心強い。
こうした体制も整っているし、勿論家族も全面的に協力するつもりだが、本人に頑張って治そうという気がないと、どうしようもない。
この日は帰りに昼ごはんを食べて帰った。
父が注文したチキンライスと松剣が注文したBランチ。日頃から無口な父だが余程ショックだったのだろう、しょんぼりして更に無口で、チキンライスも3分の1くらいしか食べられなかった。
可哀想だが代わってあげる訳にもいかない。何とか癌に立ち向かい、完治を目指して頑張って欲しい。
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